動画のBGMと著作権|YouTube・Instagram・TikTokの企業アカウントで使える音源と公開前の確認手順

企業動画用のBGMをノートPCで選ぶ日本人女性の担当者
同業他社のリールが流行りの曲で伸びているのを見て、「うちも使いたいけれど、会社の動画で大丈夫だろうか」と手が止まっていませんか?フリー素材と書かれたBGMなら何でも使ってよいのか、迷っている担当者も多いはずです。

企業動画のBGMは、入手元と規約と使う媒体の3つを確認すれば、必要以上に怖がらずに選べます。2026年10月時点の文化庁・JASRACや各SNSの公式情報をもとに、企業アカウントの目線で使える音源の線引きと公開前の確認手順をまとめました。個別のケースで判断に迷うときは、素材の提供元や弁護士などの専門家に確認してください。

企業の動画でBGMの著作権が問題になる理由

流行りの曲を会社の動画に使うと何がまずいのか、まずは仕組みから押さえておきましょう。理由は大きく分けて3つです。

曲の権利と音源の権利の二重構造

楽曲の著作権(メロディ・作詞)と著作隣接権(音源・CD)の二重構造を示す解説図解

1曲のBGMには、曲そのものの権利と、録音された音源の権利の2つが重なっています。曲をつくった作詞家・作曲家がもつのは著作権です。一方、歌手・演奏者や音源を制作したレコード製作者には、著作隣接権と呼ばれる別の権利が認められています。2つの権利の違いは以下のとおりです。

権利守られるもの主な権利者確認先の例
著作権歌詞・メロディなど曲そのもの作詞家・作曲家(管理を任された音楽出版社など)JASRACの作品データベース(J-WID)など
著作隣接権CD・配信などの録音された音源や演奏レコード製作者・歌手・演奏者レコード会社など

文化庁によると、曲の著作権は原則として作者の死後70年まで続きます。古い曲でも、CDや配信の音源を使うなら録音物の権利が残っていないかの確認が必要です。曲と音源の両方をクリアして、はじめて動画に使える状態になると考えてください。

私的使用に当たらない会社の動画

著作権法で認められている例外の1つが、私的使用のための複製です。ただし、家庭内などの限られた範囲で、仕事以外の目的で使う場合を前提にしています。会社の宣伝や採用のための動画は仕事の目的にあたるため、私的使用の例外には当たらないと考えておくのが安全です。文化庁も二次創作の解説の中で、SNSなどでの公開は私的利用の範囲外になると説明しています。「社内向けのつもりだった」「個人のスマホで撮った」と軽く考えて市販曲を付けると、権利者の許諾がないまま公開してしまう恐れがあるので注意が必要です。

SNSの包括契約でカバーされない範囲

YouTubeや主要なSNSは、JASRACなどの著作権管理事業者と利用許諾契約を結んでいます。管理されている曲を自分で演奏・歌唱した動画なら、契約の範囲内で投稿できる場合が多いのも事実です。一方で文化庁は、次のような場合には別に許諾が必要だと説明しています。

  • CDや配信などの元の音源を使う投稿
  • 広告など営利目的を含む投稿
  • 利用許諾契約の対象外のサービスへの投稿

JASRACが公開している許諾契約のあるサービスの一覧も、一般ユーザーが投稿する動画を対象にした案内です。「YouTubeは契約しているから会社の宣伝動画でも大丈夫」とは読めない点に気をつけてください。また、インディーズや海外の曲には管理団体に預けられていないものもあり、権利者への直接の確認が求められます。

動画のBGMが著作権侵害になったときに起きる事態

YouTubeにおけるContent ID申し立てと著作権侵害の警告の違いを比較したインフォグラフィック

違反したときに何が起きるのかを正しく知っておけば、必要以上に怖がらずに済むはずです。プラットフォーム上の措置と法律上の責任を分けて整理しました。

YouTubeの申し立てと著作権侵害の警告の違い

YouTubeで起きるトラブルは、Content IDによる申し立てと、著作権侵害の警告の2種類です。名前は似ていても、チャンネルへの影響の大きさはまったく違います。主な違いを表で比べてみましょう。

項目Content IDの申し立て著作権侵害の警告
きっかけ権利者が登録した音源と自動で一致したとき権利者の削除依頼で動画が削除されたとき
動画への措置権利者の設定により視聴のブロック・収益が権利者へ・再生状況の追跡対象の動画が削除される
チャンネルへの影響申し立てだけなら通常は影響しない90日以内に3回で関連するすべてのチャンネルが停止

申し立てが届いても、該当部分のカットや、オーディオライブラリの曲への差し替えで対応できます。一方で、正当な理由のない異議申し立ては削除依頼から警告につながる場合があるため、慎重な判断が必要です。警告は1回目・2回目でも対象の動画が削除され、90日以内に3回受けると関連するすべてのチャンネルが停止されてしまいます。なお、1分を超えるYouTubeショートでの音楽の扱いは2026年9月24日から変更されているため、公開前に最新のヘルプで確かめておきましょう。

InstagramとTikTokでのミュートや削除

Meta(InstagramやFacebookの運営会社)の音楽ガイドラインでは、適切なライセンスを取得している場合を除き、営利目的での音楽の使用は禁止です。許可のない音楽を含む投稿は、ブロックやミュート、削除の対象になると明記されています。音楽を聴かせる目的のコンテンツでは、ページやプロフィールごと削除される場合もあるので注意が必要です。TikTokのビジネス向けヘルプでも、企業は一般の音楽ライブラリを商用目的で使えないと案内しています。少人数で時間をかけて育てたアカウントでも、音源の選び方1つで投稿が見られなくなる可能性は否定できません。集客や採用の入口を守るためにも、使う音源は公開前に確かめておきましょう。

権利者からの請求と法律上の責任

プラットフォーム上の措置とは別に、権利者から直接連絡や請求が届くケースもあります。著作権法では、権利者は侵害の停止(差止め)や損害賠償を求められる仕組みです。さらに、著作権侵害には刑事罰も定められています。文化庁の解説によると、罰則は原則として10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金です。会社の業務として侵害した場合は、法人にも3億円以下の罰金が科される可能性があります。数字だけを見て怖がる必要はありませんが、個別のケースで迷ったときは弁護士などの専門家に相談してください。

企業動画のBGMの入手先ごとの使いやすさ

手元のBGMがどこから来たものかによって、確認すべき点は変わります。入手先ごとの主な条件を一覧にしました。

入手先企業動画での使いやすさ主な条件
市販曲のCD・配信音源許諾が必要曲と音源の両方の権利者の許諾
自分たちで演奏したカバー許諾や手続きが必要な場合あり宣伝目的ならJASRACの広告目的複製などの手続き
SNSアプリ内の一般の音源企業の商用利用は不可または制限ありSNSごとの規約で商用利用が制限される
SNSが企業向けに用意した音源条件つき使える媒体の範囲を規約で確認
YouTubeのオーディオライブラリ条件つき曲によってクレジット表記が必要
フリーBGMサイト・有料ストック音源条件つきサイトごとの規約(媒体・表記・禁止事項)
オリジナル制作の音源使いやすい使う媒体や期間を契約で決めておく

表の「条件つき」の音源も、規約の範囲を守れば企業の動画で使えます。入手先ごとの詳しい注意点を、以下で順に見ていきましょう。

許諾が必要な市販曲とカバー演奏

市販曲のCDや配信音源をそのまま使うなら、曲の著作権と音源の著作隣接権の両方について許諾が必要です。JASRACは、市販の音源を使う場合は音源を制作したレコード会社などに直接問い合わせるよう案内しています。自分たちで演奏したカバーなら音源の権利はクリアできても、会社の宣伝動画では別の手続きが必要です。JASRACによると、特定の企業や商品・サービスを宣伝する動画は、事前に広告目的複製の手続きが求められます。使いたい曲が管理楽曲かどうかは、JASRACの作品データベースJ-WIDで調べるのが近道です。手続きの手間を考えて、宣伝目的の動画では市販曲以外の音源を選ぶ判断も検討してみてください。

条件つきで使える素材サイトとSNS内の音源

フリーBGMサイトや有料のストック音源、SNSが企業向けに用意した音源は、規約の範囲内であれば企業の動画にも使えます。注意したいのは、「無料」や「商用利用OK」の表示だけで判断しない点です。例えばYouTubeのヘルプには、Content IDの仕組みでは「無料」とうたう音楽の説明文は考慮されない、と書かれています。使える範囲は、SNSごと・サイトごとに細かく異なるのが実情です。企業アカウントでの扱いはSNS別に、フリーBGMは規約の読み方として、後半で順に紹介します。

権利の範囲を決めやすいオリジナル音源

作曲家に依頼して作るオリジナル音源は、使う媒体や期間、権利の扱いを契約で決めておける点が強みです。会社のテーマ曲のように長く使いたい音楽なら、検討する価値があります。一方で、制作費と制作期間がかかるため、日々のSNS投稿のすべてに用意するのは現実的ではありません。契約で決めておく内容は、使える媒体・期間や地域の制限・別の動画への使い回しの可否の3点が基本です。動画そのものの権利の扱いは、「動画編集の外注先の選び方」で紹介している契約まわりのチェック項目も参考にしてください。

YouTube・Instagram・TikTokの企業アカウントで使えるBGM

YouTube・Instagram・TikTokの企業アカウントで使えるBGMの条件と制限をまとめた比較図

SNSには、企業アカウントでも使える音源が用意されています。2026年10月16日時点の各社の公式ヘルプ・規約をもとに、主な違いを表にまとめました。

項目YouTubeInstagram(Meta)TikTok
企業でも使える音源オーディオライブラリサウンドコレクション商用音楽ライブラリ
制限がある音源Content IDに登録された市販曲などライセンス音楽ライブラリ(特定のビジネスアカウントでは使えない)一般の音楽ライブラリ(商用利用は不可)
注意点クリエイティブ・コモンズの曲は説明欄にクレジットが必要サウンドコレクションの利用はMetaの製品上に限られるビジネスアカウントでは商用音楽ライブラリの曲だけが表示される

どのSNSも、企業向けの音源は規約の範囲で使える代わりに、使える場所や表記に条件があります。各SNSの仕様は変更される場合があるため、使う前に最新のヘルプにも目を通しておきましょう。

YouTubeのオーディオライブラリ

YouTubeのオーディオライブラリは、YouTube Studioから使える無料の音楽・効果音のライブラリです。ライブラリからダウンロードした曲なら、Content IDの申し立てを受けないとYouTubeは説明しています。曲には「標準ライセンス」と「クリエイティブ・コモンズ」の2種類があり、クリエイティブ・コモンズの曲は説明欄にアーティストのクレジット表記が必要です。一方で、外部のサイトで「無料」とされている音楽について、YouTube側では権利を買ったかどうかを把握できません。外部の音楽を使う場合は、配布元のライセンスを自分で確認するよう公式ヘルプでも勧められています。YouTube以外の媒体で使えるかについては、今回確認した公式ヘルプに記載が見当たらなかったため、転用は避けた方が安心です。

Instagramのビジネスアカウントとサウンドコレクション

Instagramで流行りの曲を選べるライセンス音楽ライブラリは、個人的な非商用利用を目的に提供されています。Metaの説明では、商用で使われないように、特定のビジネスアカウントや投稿の種類ではライブラリを使えない仕組みです。代わりに企業が使える候補として、Metaは「サウンドコレクション」を用意しています。サウンドコレクションは著作権使用料が無料の音源集で、規約上は商業目的でも利用可能です。ネット上には「クリエイターアカウントに切り替えれば流行りの曲が使える」との情報もありますが、商用目的の回避策としてはおすすめしません。

TikTokのビジネスアカウントと商用音楽ライブラリ

TikTokでは、企業向けに権利処理を済ませた「商用音楽ライブラリ」が用意されています。ビジネスアカウントで動画にサウンドを追加しようとすると、商用音楽ライブラリの曲だけが表示される仕組みです。個人アカウントで見かける一般の音楽ライブラリは、企業が商用目的で使えないとTikTokは案内しています。商品やサービスを宣伝する投稿でも、商用音楽ライブラリの曲だけを使うのがTikTokの推奨です。他のユーザーが作ったオリジナルサウンドを使いたい場合は、法務の担当者や専門家に確認するよう勧められています。

別のSNSへ動画を使い回すときの音源

1本の動画をInstagram・TikTok・YouTubeに投稿したり、自社サイトに載せたりする使い回しは、手間を減らせる便利な方法です。ただし、SNSの中で付けた音源は、別の媒体でも使えるとは限りません。例えばMetaのサウンドコレクションの規約では、利用はMetaの製品で作成・配信するコンテンツに限られています。Instagram用に作った動画をそのままYouTubeや自社サイトに載せると、規約の範囲を外れる恐れがあるので注意が必要です。TikTokの商用音楽ライブラリやYouTubeのオーディオライブラリについても、他の媒体で使えるかは公式ヘルプで確認できませんでした。使い回す動画は、どの媒体でも使えるライセンスのBGMに付け替えてから公開すると安心です。

フリーBGMの商用利用OKで確認したい規約の項目

商用利用可能なフリーBGMを使う前に確認すべき権利規約チェックポイント

「商用利用OK」と書かれたフリーBGMでも、細かな条件はサイトや曲ごとに違います。規約を開いたら、まず以下の項目を確認してください。

確認する項目見落としやすい点
商用利用の範囲法人の宣伝目的まで含むか
クレジット表記必要か、どこにどう書くか
使える媒体SNS・動画サイト・広告・店頭などの制限
禁止されている使い方音源を主役にした動画や再配布
Content IDなどへの登録利用者による登録が禁止されているか
曲ごとの個別条件作曲者が別の条件を付けていないか
規約の改定使った時点の規約を保存しているか

表の項目は、OpenTracks(旧DOVA-SYNDROME)のように規約を公開しているサイトなら、ライセンスのページで確かめられます。項目ごとの読み方を順に見ていきましょう。

商用利用の範囲とクレジット表記

「商用利用OK」の表示があっても、どこまでの商用を指すかはサイトによって異なります。個人の収益化動画を想定した表現なのか、法人の宣伝目的まで含むのかを規約の本文で確かめるのが基本です。例えばOpenTracksの音源利用ライセンスでは、商用・非営利や個人・法人を問わず利用できると明記されています。クレジット表記の要否も、あわせて確認したい項目の1つです。OpenTracksはクレジット表記を不要としています。しかし、YouTubeのオーディオライブラリにあるクリエイティブ・コモンズの曲には表記が必要です。表記が必要な場合は、書く場所(説明欄や投稿文など)と書き方の指定まで確認してください。

使える媒体と禁止されている使い方

使える媒体が限られている規約もあるので注意が必要です。SNSや動画サイトでの利用は認めていても、広告や店頭での放映に別の条件を設けていないか、媒体の項目で確かめておきましょう。禁止事項の欄も読み飛ばせません。OpenTracksの規約では、音源そのものの配布・販売や、音源を主なコンテンツとする動画の公開が禁止されています。動画編集を外注する際に音源ファイルを依頼先へ渡す場合も、再配布にあたらないかを規約で確かめておくのが安全です。

Content IDへの登録と曲ごとの個別条件

YouTubeのContent IDは、権利者が登録した音源と一致する動画を自動で見つけ出します。YouTubeのルールでは、Content IDへの登録には独占的な権利が必要です。OpenTracksの規約にも、フィンガープリント(YouTubeのContent IDなど)への登録を禁じる項目があります。また、OpenTracksでは作曲者が別の利用条件を設けている場合、作曲者の条件が優先される決まりです。ただし、配布・販売や音源を主なコンテンツとする動画の禁止などは、OpenTracksの規約が優先されます。サイト全体の規約だけでなく、使う曲のページも開いて条件を確かめてください。なお、「10秒以内なら使っても大丈夫」のような秒数の目安には、公式の根拠が見当たりません。

動画にBGMを付ける前の著作権の確認手順

動画公開前におけるBGMの入手元記録から権利チェック、公開までの安全な運用フロー

確認の手順を決めておけば、誰が担当しても同じ確認ができます。後から社長や取引先に聞かれたときも、記録を見せて説明できる状態を目指しましょう。

入手元とライセンス画面の記録

最初のステップは、BGMを手に入れた時点での記録です。以下の5項目を残しておきましょう。

  • 入手元のサイト名とURL
  • 曲名と作曲者名
  • ライセンスや規約のページのスクリーンショット
  • 記録した日付
  • BGMを使った動画のタイトルと公開先

記録はスプレッドシート1枚にまとめておくと、担当者が変わっても引き継ぎが簡単です。スクリーンショットを残しておけば、規約が改定されても、使った時点の条件を示せます。実際にOpenTracksは、2026年9月15日にDOVA-SYNDROMEから名称を変更したばかりです。記録さえ残っていれば、どの動画にどの規約の音源を使ったかを聞かれても慌てません。

公開する媒体と表記の最終確認

動画を公開する直前には、記録した規約と公開先を照らし合わせます。確認するのは3点です。公開する媒体が規約の範囲内か、クレジット表記の要否、表記が必要なら記載したかを見てください。1本の動画を別のSNSや自社サイトへ転載するときは、転載先でもう一度同じ確認が必要です。権利の確認が済んだら、音量のバランスなど仕上がりの確認に進みます。音量など仕上がりのチェックポイントは「動画編集で失敗しないためのチェックリスト10項目」にまとめているので、あわせて活用してください。

外注先に確認したいBGMの用意の仕方

動画編集を外注する場合も、BGMの権利の確認を依頼先任せにせず、依頼する前に以下の3点を聞いておきましょう。

  • BGMをどこから用意するか
  • どのライセンスでどの媒体まで使えるか
  • 自社で用意した音源を渡すときの扱い

答えを記録に残しておけば、外注した動画でも社内と同じ確認ができます。外注するかどうかから迷っている場合は、「動画編集は内製化と外注どっちがいい?」が判断の材料になるはずです。

まとめ

企業動画のBGMは、曲の権利と音源の権利の両方を意識して選ぶところから始まります。企業アカウントで使える音源はSNSごとに違い、フリーBGMの「商用利用OK」の中身も規約次第です。入手元とライセンスを記録し、公開する媒体が規約の範囲内かを確かめてから投稿すれば、必要以上に怖がる必要はありません。

まずは、いま公開している動画のBGMがどこから来たものか、1本ずつ確認してみてください。

AIで作った画像や動画の著作権が気になる方は、「AIで作った画像・動画はSNSに載せて大丈夫?」もあわせて読んでおくと安心です。

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